100°(hundred degrees)。
コメンサルロードバイクのトップモデル。フレームはこの「100°」のひとつ下のモデル「スチュワート」、フレーム売りの「VIP」と同じN+uts2。カラーも同じアノダイズド。(だと思う) 02モデルではコンポーネントパーツにカンパニョロを採用していたが、03モデルではシマノ デュラエースに変更されていた。因みに「スチュワート」はアルテグラ。考えようによっては「スチュワート」の方がお買い得かも・・・・。
これらのロードフレーム(MTBのフレームもそうだけど)がいかに丁寧に作られているか、コメンサルの 2002のカタログから抜粋してみると・・・・・


フレームワーク:チューブ
フレーム製作には亜鉛ととマグネシウムが添加された7000系アルミニウムを使用している。アルミは、現在フレーム製作に用いられている合金の中でも、もっとも剛性が出せる非複合素材であり、この素材を使うことによってフレームの高剛性かに成功した。アルミの特性としての可延性と可展性の高さは理想のチューブを作り出すことを可能にし、その結果、トップチューブの最も薄い部分は0,9mmという、アルミとしては例外的な薄さになっている(チューブ諸元表参照)。こうしたチューブ自体の薄肉化とアルミ素材の比重の小ささ(2,71gr/3cm)のおかげで、コメンサルのフレームは脅威的な軽さに仕上がっている。
しかし、7000系アルミがその素材特性を最高に発揮できるのは熱処理後のことである。熱処理は2回行われる。1回目はT4処理がされる。所要時間は4時間。490度のオーブンの中で熱せられた後、大気温まで急速冷却される。この処理によってフレーム内部に残った応力は除去され、溶接時の熱で壊された素材内部の分子構造の均質化が促進される。
技術用語ではこの処理を“焼き鈍し処理による内部組織の均質化”と呼んでいる。2回目の工程ではT6処理が行われる。この処理は1回目の熱処理よりはるかに長く続けられ24時間ほどかかる。フレームはオーブンの中で200度から90度まで温度を変えながら熱処理される。これによって、フレームの時効硬化が促進され、素材内部の分子の結晶化が促進される。これらの処理によって、耐久性や硬さといったチューブの素材特性は飛躍的に向上する。これら2つの熱処理は、サイクリストが高く評価するフレームの剛性と耐久性の確保に大きな効果を発揮する。使われているのはラウンドチューブで、メインチューブには直線状もしくは円錐形チューブが用いられる(この形はペダリングで発生する多方向からの応力に最も耐えうる形状である)。ただ、チェーンステーには、ペダリングパワーのリヤホイールへの伝達効率を高めるために、楕円形チューブが使われている。フレームの性能を決めるポイントであるボトムブラケットは、その独特の形状がオリジナリティを発揮している。このボトムブラケットは、ハンドルからクランクまでのエネルギー伝達効率にとりわけ優れている。 このエネルギー伝達効率こそが、我々がフレームを作る際に最も注意を払ったことである。コメンサルが使っているボトムブラケットは、市場に出回っている多くのものが押し出し製法で作られているのに対して、鍛造製法で作られている。この製法で作られたボトムブラケットは、素材構造が破壊されることがなく、したがって高い抗応力性を確保している。その結果、破断の可能性や脆弱さは完全に追放されたのである。
オーバーサイズヘッドチューブ(1'1/8)を使うことでフレームのトータルパフォーマンスはさらに高められ、特にフロント周りの剛性感がアップに貢献している。また、ヘッドチューブはインテグラルタイプになっている。

各チューブ形状の詳細は以下のようなっている。
−ヘッドチューブ:チューブ径52mm  インテグラルタイプ
−トップチューブ:チューブ径35mm  肉厚:1,6/0,9/1,3mm ラウンド形状
−ダウンチューブ:チューブ径53/40mm  肉厚:1,6/1,2/1,4mm 円錐形状
−シートチューブ:チューブ径31,8mm  肉厚:2,2/1,0/1,4mm ラウンド形状
−チェーンステー:チューブ径35,6/19mm  肉厚:1,6mm 楕円/ラウンド形状
−シートステー:チューブ径19mm  肉厚:1,6/1,4mm ラウンド形状
重量:サイズ55で1,500g

組立:チューブの溶接
コメンサルのフレームのほとんどはTIG(Tengsten Inert Gas タングステン・イナート・ガス)溶接によって作られている。この溶接方法は信頼性が高いため、バイシクルフレームを作る上で広く用いられている。美しい溶接痕をのこすために溶接ビードは一般レベルよりも薄く、またゴツゴツ感もない。
技術的な違いもいくつかある。
まず最初は、ごく一般的にTIG溶接によってフレームチューブが接合される。一般的なTIG溶接とコメンサルのそれとの相違点は溶接温度で、我々の溶接は低い温度で行われているのである。そのため、チューブ溶接には通常よりも長い時間が必要になり、フレーム製作にかかる時間も長くなっている。が、この結果、溶接ビードはなんら特別な処理をすることなしに美しい仕上がりを見せる。ついで溶接ビードには再びトーチで熱が加えられるが、ここでは補強のためのロウ材はなんら加えられない。こうした行程を経て溶接ビードはさらに美しく仕上げられる。そしてフレーム完成後、すべての溶接部分には軽い研磨処理が施され、ほんのわずかなビードの乱れも修正される。
こうした独特のTIG溶接法を使うことによってフレームの素材的特性は完璧に保たれる。というののも、溶接部に熱をかけすぎるトラディショナルな溶接方法と違って、TIG溶接では溶接部が高い熱にさらされることがないからである。

仕上げ:フレームの塗装
塗装に入る前、フレームは酸などで洗浄され、塗装のノリを悪くする恐れのある表面についた油分が落とされる。この処理は腐食防止処理としても役立っている。塗装工程は指定されたカラーに調合されたエポキシパウダーの塗布から始められる。次いで180度のオーブンに入れられた(エポキシパウダーの焼き付けのため)後、熱をかけると自動的に張り付く高耐熱性ステッカーが指定の場所に張り付けられる。そして塗装面を保護するクリアー塗装が施される。コメンサルが採用しているパウダーエポキシ(塗料とクリア)を使った塗装は、長期間の使用や夏の太陽の紫外線にもビクともしない、高い耐久性と丈夫さを兼ね備えた、深みある美しい色合いを作りだすことができる。そして、クロームメッキされたヘッドマークがヘッドチューブに付けられることで、フレームの塗装は終了する。

用語集
(1)可延性:超薄肉チューブを作るのに適したアルミニウム(や他の金属も)の特性のひとつ
(2)可展性:アルミニウム(や他の金属も)が持つ、チューブの薄肉化を行うために圧延機を通過させてもちぎれにくい特性のひとつ
(3)押し出し成形:直線で形成された素材を特定の形に成形する技術
(4)鍛造:あらかじめ決定された特性を持った形や寸法にするために、衝撃を加えることで可逆的な変形をアルミニウム(やその他の素材)などに加えること。なお、我々は冷間鍛造品を使用している。



上記の説明は02モデルまでのN+uts A SLについての説明であり、N+uts2ではもっとフレームチューブの肉厚が薄くなっている。03モデルMTBのVIPの説明文によると、そのもっとも薄い箇所ではなんと0.7mmという驚異的数値に達している。

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