最初ボクの方からの提案は、MTBホイールを使用したスポルティフだったのだが、オーナーの強い希望により、700×28Cを使用した。その際のボクからの提案は「28Cでも問題は無いかも知れませんが、体重が100kgと言うのを考えて32Cと思ったのです。通常のメーカー車等は大体65kgの人間が乗ることを想定して設計されています。勿論100kgの人が乗ってはいけないと言うわけでは有りませんが、やはりその当たりのことをふまえると、フレームのパイプをやや肉厚の有るモノにして、その分乗り心地は硬くなるのとフレームに対するショックを和らげるために、32Cの方がよりおすすめ出来ます。」と言うことだったのだが、オーナーからの返事で「うーん、体重の問題だけでしたら、なんとか減量しますんで28Cでいってもらえますか? 乗り心地が硬くなるのは、全然かまわないです。」ということで28Cに決まった。

 紆余曲折を経て結局はオーソドックスなスポルティーフに落ち着いた。しかし、この紆余曲折が非常に大切。まず車種ありきではなく、大切なのはコンセプトだからだ。結果として従来から有るような車種になったとしても、まず車種ありきで考えるのとは全然違ってくる。そう言うコンセプトを具体的な形として表すのが(言い換えれば、具体的な形に翻訳するのが)我々の仕事だと常々思っている。確かに全てが全て100%イメージ通りと行かないのが正直なところではあるが、それでも最低でも80%以上の満足度は得て頂けるようにと思っている。

 そんなわけで、見た目はオーソドックスなスポルティフだが、かなりレーシーなディメンションになっている。530mmというフレームサイズの割にはトップチューブを550mmと長く取れたので、クイックなハンドリングを狙って通常のスポルティフモデルよりもヘッドアングル(HA)を73°と立てて、オフセット(OFS)も45mmと短めに設定したが、フロントセンターは603mmとまぁまぁ余裕のある数字になった。このHAとOFSだけ見れば通常のロードレーサーと全く変わりがない。

 裏を返せば、通常のツーリング車としてのスポルティフでは採用しない寸法なのだ。ただし、ハンドリングには、タイヤの太さやリアセンターの長さ(通常よりやや短いくらいの420mm)等々も影響してくるので、全くロード並のクイックなハンドリングになったわけではない。しかし、長い距離をツーリング的に走ることも勘案すればこれくらいにしておかないと疲れる。

 また、オーナーのウエイトを勘案してやや肉厚のパイプ(通常は0.5mm-0.8mmのダブルバテッドチューブを使用するのだが、今回は0.6mm-0.9mm)を使用した。

 コンポーネントは基本的にアルテグラ。オーナーの希望もあってデュアルコントロールレバーを採用。やはり機能的に考えると、もはやWレバーの出る幕は無いだろう。まぁしかし、輪行しやすくすると言う意味ではWレバーに軍配が上がるかも知れないが。フロントバッグを使用することも考えて、デュアルコントロールレバーに変速バナナを組み合わせた。

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