仏蘭西紀行

4 ようやく巴里へ

 どうにか腹を満たしたボクは、シャンゼリゼに向かって走り出した。お巡りさんは「真っ直ぐ」と言ってくれていたようなのだが、なんとT字路にぶつかってしまった。これをどう真っ直ぐに行けというんだ?勿論、フランス全土地図を見たってわかるわけない。立ち尽くしていると、とある紳士が英語で話し掛けてきてくれた。彼はボクの自転車をじっくり眺め、リアディレイラーを指差し「Oh!Simano!」などといちいち驚いてみせ、「Nice bike」と誉めてくれた。そして「私のバイクも見てください」なんてことを言いながら財布から写真を取り出したが、それは自転車ではなかった。ニコニコしながら彼は「私の奥さん」、「子供です」と次々に写真を見せ、やっと最後に自転車の写真を見せてくれた。ボクも一応「Nice bike」と返しておいたが、実のところ写真などあまりよく見てはいなかった。ボクは道に迷っているのだ。自転車の話で盛り上がっている場合ではない。ボクは間を見て「シャルル・ド・ゴール広場に行きたいんだけど」と尋ねてみた。すると彼は随分と丁寧に教えてくれた。

 お陰で、そこからは迷わずにシャンゼリゼ通りに出ることが出来た。憧れのシャンゼリゼ。そこを今ボクは自分のランドナーで走っている。そして、その行き着く場所こそがシャルル・ド・ゴール広場である。ボクはやっと辿り着けたのだ。やっと・・・。先が思いやられた。

 さて、とりあえずはパリの中心地には着いた。次にボクがしなければならないことは、ねぐらを探すことだった。勿論、予約など入れていない。しかし、まぁ大都市パリ。ホテルなんてきっと山ほどあるに決まっている。案の定、ぶらぶらしているといくつもの看板が目に付く。適当なところで入ってみる。正面のカウンターにお婆さんが座っていた。ボクは颯爽と「六ヶ国語会話集」を取り出し、ホテルの宿泊のところを指差した。はじめから口での会話は諦めている。するとお婆さんはかなり聞き取りやすい英語で対応してくださった。これには非常に助かった。

 結局このホテルには3泊もすることになり、いろいろととてもお世話になった。パリで過ごした3日間はボクに退屈というものを与えなかった。凱旋門にエッフェル塔,セーヌ川、ノートルダム寺院。それからルーブル美術館。(ルーブルでは中で迷子になってしまった)その他・・・。

 なんてことはない。意外と英語で通じるのだ。フランス人は絶対に英語で喋ってくれない、なんて事を聞いていたがそんなことはない。とはいえ、ボクの英語力なんてたかが知れている。それでも結構喋れる気分になるものだし、夢の中の会話まで英語になってしまうものなのだ。

 オペラ座の近くには日本人向けの食堂や、食料品店もあり、そこで米やインスタントラーメン、レトルトカレー等を仕入れるが、どれもこれも日本の2倍はする。日本から持ってくればよかった。

 9月2日。いよいよツーリングに出る。目的地は無い。とりあえず、海を目指そうと思った。どんどん南下して行って海まで辿り着くまではゆうに1,000kmはあるようだが、まぁどうにかなるだろう。そんなわけでいよいよ走り出した。



シャンゼリゼ通り

パリで宿泊したホテル

ホテルの窓から、パリ市内1

ホテルの窓から、パリ市内2

修復中だった大凱旋門

大凱旋門からパリ市内1

大凱旋門からパリ市内2

大凱旋門からパリ市内3

コンコルド広場からシャンゼリゼを見る

エッフェル塔から見たパリ

コンコルド広場1

コンコルド広場2

セーヌ川

セーヌ川から望むエッフェル塔

チケット(ルーヴル美術館、凱旋門、エッフェル塔、オルセー美術館の入場券どれがどれやったかは忘れた)

パリで夜のポタリング
(自転車を見て悩む青年の像)

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