仮面ライダークウガの時間

Part 11

 仮面ライダークウガの時間です。一年の長きにわたり戦ってきたクウガもとうとう最後の戦いを終え、五代君は冒険へと旅立ちました。そう、とうとう最終回を迎えたわけです。そんなわけで「仮面ライダークウガの時間」も今回で最終回。で、最終回スペシャルでちょっと長くなるかも…。

 さて、ゴ・ガドル・バは本当に強かった。またもクウガこと五代君は救急車で病院送りに。よくまぁ病院に送られるヒーローですねぇ。そんなところが妙にリアリティーがあって良いのですが。

 それと以前から気になっていた、科学警察研究所(以下、科警研)の榎田さんの親子関係。仕事、仕事で全く子供に構ってやれず、子供の痛い心をわかりながらも、つい現実に忙しい目の前の仕事に忙殺され、又そこに自分の言い訳を作り逃げてしまう。或いはそんな大人達が最近の高校生の起こす事件の遠因となってるのかもしれません。でも榎田さんは逃げませんでした。「自分に出来るだけのムリをしてるだけですから」といいながら、みんなの笑顔のために戦っている五代君に勇気づけられて。

 このシーンを見て考えさせられた大人の方も多かったのではないでしょうか?子供の冴(さゆる)君は、参観日に行くと約束しながらも来てくれなかった母親に対して、とうとう怒りを爆発させ部屋に籠もってしまいます。そんな冴君に榎田さんは部屋の外から一生懸命話しかけ謝ります。そこに見られたのは、親と子、或いは大人と子供という関係ではなく、互いに一人の人間対人間としての愛情が感じられました。そして冴君はやっと出てくるのですが、天照大神の神話を彷彿させるシーンでしたね。冴君が出てきてくれたおかげで「榎田家」と言う世界は明るくなったのです。

 さて、当の五代君ですが、クウガとなって再びゴ・ガドル・バに挑み、今までに無かったフォーム、アメイジングマイティーフォームとなり倒します。が次にはすでに第0号−ン・ダグバ・ゼバ−が待ちかまえていました。グロンギの最後にして最強の戦士。このダグバに挑んだエピソード47ですが、全編通して雨!こんなの子供番組はおろか普通のドラマでも見たことがないです。そしてさらにエピソード48では雨から吹雪に!製作陣の気合いが伺いしれます。最後の3話はもう子供番組の領域を越えていました。本当に。

 アメイジングマイティーフォームのクウガでダグバに立ち向かうも、全く歯が立たず、遂に五代君はひとつの決意をします。以前にゴ・ジャラジ・ダを怒りにまかせて倒した際に、イメージとして垣間見た「凄まじき戦士」になることを。心を怒りに(或いは憎しみに)捕らわれ、正義の心を無くしたときになってしまう「凄まじき戦士」−クウガアルティメットフォーム。

 ダグバに最後の戦いを挑むとき、一條刑事も一緒でした。そんな一條刑事に五代君は静かに言います「一條さん、オレなります」「見てて下さい、オレの変身」と。それはかつて五代君がグロンギと戦うことを決意して、声を張り上げ一條刑事に言ったせりふでした。

 真っ白な吹雪の中、ダグバと戦うクウガ。究極の闇をもたらそうとしているダグバ。世界の平和を、明るさを守ろうとするクウガ。ゾロアスター教的に言えばダグバとは即ちアーリマンであり、クウガとは即ちアフラマズダであるとも言えるでしょう。そんな2人の戦いは、互いにベルトにダメージを受け変身を解除し、人間の姿で殴り合います。ダグバは笑いながら、そして五代君は泣きながら。そうだったのです。拳でしか解決出来ず戦いを続けてきた五代君でしたが、その心はいつも泣いていたのでしょう。

 真っ白な雪の上に、真っ赤な血が飛び散ります。こんな悲惨なシーンは今までの子供番組では見られなかった。以前某テレビ番組の取材で、映画監督の北野たけしがインタビュアーに「監督の作品には観ている側が『痛い!』と思うような暴力のシーンが多いですよね」と持ちかけられて「当たり前だ。だって殴られれば痛いし、血が出ちゃうんだから。痛そうだと思えばやんないでしょ。『ダイハード』なんて痛々しいシーンを作らずにかっこよく見せてるけど、あれだって考えてみれば凄い暴力だよ。ずるいよね。ホントは暴力なんてかっこいいモンじゃない。痛いモンなんだよね」と答えていましたが、まさに今回のクウガという作品はその通りなのです。

 今までのシリーズでは大前提として正義とはこういう物だってのがあったのに対し、クウガでは正義って何だろう?と子供達に問いかけているのです。世の中が昔よりずっとずっと複雑になってきた今、正義も又難しくなってきたのです。

そんなクウガの最終回はこれまた子供番組の常識を破りました。何とキューバまで海外ロケ。そして最終回なのに仮面ライダーは登場しない。出てくるのはひたすら青い空、青い海。砂浜には握りしめた拳を見つめ、物思いに耽っているのは、グロンギ達を全て倒し、やっと本来の自分を取り戻して冒険の旅に出た五代君でした。世界がいつもこうであって欲しいという製作陣からのメッセージなのでしょう。

 如何でしたでしょうか、仮面ライダークウガ。きっと子供達の、そして皆さんの心に強く残るヒーローとなったことでしょう。現実の我々もグロンギのような存在を生み出さない世の中を作っていこうじゃありませんか!

 まだまだ書き足らないこともあるのですがきりがないので、ここらで筆を置くことにします。では皆さんご機嫌よう。来月からは「仮面ライダーアギトの時間」としてお会いできるかもしれません。さようなら。


|前へ|次へ|