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2日目 走行距離:108km

明け方、バチッと目が覚める。まだ4時。それからなんだか冴えて眠れない。きちんと寝ておかないとしんどくなる、寝なきゃ寝なきゃとあせると余計眠れない。しかしいつの間にかウトウトし、寝入ってしまう。そして寝坊。

朝ご飯と身支度をすませて自転車と共に外に出ると、昨日の荒れ模様は嘘のように、きれいに晴れ渡った青空が広がっていた。
今日のルートは坂地獄の予定だが、こーんなにいい天気だと順調にいけそうな気がする。
ちなみに今日のテーマは、「登坂」と、「淡路島牧場でカレーを食べる」と、「鳴門海峡観光」と、「淡路サンセットラインをサンセット時に走る」である。もりだくさん。

08:30、洲本発。快調に走り出す。すぐに坂が始まるかと思いきや、なかなか始まらない。おおー、このまま始まらんといてくれーと願うがそうはいかず、やがて急な坂が出現し、しばらく登りが続く。足を着くのはダメ、時速5kmはOKというルールを作り、自分をなだめすかしながら地道に登っていく。

実は旅行前、「一人で淡路島まで行っても、登坂の時は来た事を後悔するかも」と思っていた。なぜなら、複数人数でツーリングに行っても、坂を登っている時は「なんでこんなにしんどい目に合いに来たんやろ、家でゴロゴロしておけばよかった」といつも後悔するからだ。人目があると見栄を張って頑張って登るが、一人になると、真正根性の無い私はすぐに降りて押すんじゃないだろうか。

しかし、逆だった。回転木馬店長の邪魔が無いので精神的援助が無くても快調である。私にすればなかなかのペースで前進していく。後悔するどころか、一人で黙々と坂を登ってる私って、ちょっとかっこええんとちゃうん?とナルシスト気質になってくる。今までに無い、不思議な現象である。

坂の頂上にたどり着き、今まで登ってきた道を眺める。ずいぶん高いところまで登ってきた自分が誇らしい。木々の緑も、空の青も最高にきれいに映った。その中心にいる、さわやかな汗をかいた私。ビバ、自分。

坂の頂上にて。山の向こうに海が見える。
坂の頂上にて。山の向こうに海が見える。

下りに入り始めたところで「立川水仙郷」&「ナゾのパラダイス」入り口にたどり着く。その前にも文字を上から大幅にテープで消してある痕跡があるナゾのパラダイスの看板はいくつかあった(登坂途中で余裕が無く、撮影できなかった)。なんだかあやしさ全開で面白そうである。しかし残念ながらここで遊ぶ時間は無い。というか、まだ開いてないようだ。「探偵!ナイトスクープ」で紹介されていたらしいので、記念に写真に収めておく。

「ナゾのパラダイス」看板。
「ナゾのパラダイス」看板。
上部に「3倍おもしろい」と書いてあるが、何と比べてだろう。

私が写真撮影をしていたら、道の向こう側から一人、チームジャージらしきものを着てロードバイクに乗った女性がシャァァァァァァーーーーーとやってきて、あっという間に私とすれ違い、去っていった。
そこで我に返った。同じ女性単独チャリダーだが、片や格好良く「シャァァァァァァーーーーー」で、片やミーハーにナゾのパラダイスを撮影…。情けない。少し「ビバ自分」気分が萎え、地道に走るかーと、またこぎ出した。
ちなみに、この旅行で出会ったチャリダーはあの人だけだった。

しばらく登ったり下ったりしているうちに山道が終わり、海岸沿いの南淡路水仙ラインに出た。天気がいいので海がキラキラと光ってきれいである。やがて淡路島モンキーセンターにたどり着いた。
計画としてはここに寄るつもりはなかったが、変更してちょっと休憩することにした。

しかしモンキーセンターは定休日だった。仕方なく前の駐車場をちょっと借りておやつを食べていると、おさるさんが2匹、山から降りて来た。入り口はフェンスで仕切られているのでこちらに来ることは出来ないのだが、おさるさんは柵の向こうから私の動向をじっとみていた。なので、私もじっと見返してみた。目をそらした方が負け、というルールを勝手に作ったのだが、私がおやつを食べ終わるとおさるさんはさっさと山の中に戻っていった。定休日にも関わらずおさるさんが見れた上に勝負に勝てたのでごきげんでツーリングを再開した。

分かりにくいけど、おさるさん。
分かりにくいけど、おさるさん。

モンキーセンターからは、大きな海沿いに平坦な道がどこまでも続いていた。海好きな私としては最高のロケーションの中、ペダリングも軽く進んでいく。

いいねえいいねえ。
いいねえいいねえ。

やがて南淡町に入り、海から離れて今度は街中の道を行く。一周をちょっとお休みして内陸に入り、淡路島牧場まで行くのだ。

内陸に入ると、主に民家とたまねぎ畑が景観のメインとなった。風がたまねぎの匂いのような気がする。たまねぎの上部はねぎのようなものがワサワサと生えているが、これはねぎとして食べられるのだろうか?などと考えながら走った。たまにお家で牛を飼っている所があり、のどかな空気が漂っていた。

たまねぎ畑。
たまねぎ畑。

国衛に着き、ちょっと道が分からなくなるがすぐに解決して、どんどん北上する。
そして昼過ぎ、淡路島牧場に到着。入り口にある牛乳パックの形の立看板がかわいい。

高さ2メートルはあったと思います。多分。
高さ2メートルはあったと思う。多分。

牧場に入るとすぐ、牛乳を試飲させてくれる所があった。普段あまり冷たい牛乳は飲まないのだが、今日はせっかくだからいただいた。甘くて濃くて、おいしかった。試飲させてくれたおじさんは私が自転車で来たことに興味を示してくれ、どこから来たかとか、どこへ行くのかとか聞いてきた。そして「私も四国一周したことあるんだよ」と話してくれた。自転車の仕様についても興味を示してくれたのだが、細かいことになるとさっぱり分からないので笑顔で返しておいた。

おじさんと別れて牧場の中をウロウロする。牛や馬が放牧されていた。ポニーが数頭、実物版メリーゴーランドにつながれて、お客さんがやってくるのをおとなしく待っていた。突然、「働いてらっしゃる牛や馬を見物しにノコノコとやってきた無職の私」というフレーズが頭に浮かび、動物たちにすまない気持ちになった。

牛団体様。 馬

牛 ポニー
皆様持ち場をしっかり守ってらっしゃる。えらいなあ。

しかし来ちゃったからには楽しまないと損である。萎えかけた気分をアップさせるべく、食堂へカレーを食べに行く。ここのカレーは、淡路たまねぎと牧場の牛乳が入っているそうだ。

学食風の食堂に入り、食券を買ってカレーを受け取り座席の方に行くと、遠足で来ているらしい小学生たちがバター作り体験をしていた。まだ始まったばかりらしいので、少し離れたところに座って、バター作りを見学しながらカレーをいただくことにする。

皆、フタつきのコップにしぼりたて牛乳(多分)を入れたものを懸命にシェイクしている。こうすると中で脂肪分が分離して、水分と固体に分かれる。これが低脂肪乳とバターだそうだ。皆、出来たての低脂肪乳を飲んで、バターをクラッカーにつけて食べていた。いいなあ〜。

カレーの方は、香辛料が苦手なお子様味覚の私でもおいしく食べられるマイルドなお味だった。ヨーグルトもついていて、得した気分。
ここはソフトクリームもおいしいらしいが、牛乳とヨーグルトで乳製品部門は満足したのでまた次の機会に…。

カレー
淡路たまねぎたっぷり。

他にも動物を見て、たっぷり1時間半も淡路島牧場で遊んで14:00頃再出発した。

ちっさいブタ君もいました
ちっさいブタ君もいました。

来た道を戻り、また一周を再開する。カレーでお腹がいっぱいになり、睡魔に襲われつつ走りだしたのだが、やがて登坂が始まり目が覚める。

ここからはやたらめったら坂だった。山道をめちゃくちゃ登ってはめちゃくちゃ下るを繰り返す。福良港にて休憩。いいお尻を発見したので激写した。

福良港オブジェ
カーソルを合わせてみてください。

これから道の駅うずしおまでの登坂もヒジョーにきつかった。だいぶヘタレてきたので、ギアを軽くしてノタノタと登った。

ようやく道の駅うずしおに16:00頃到着。道の駅うずしおでは遊歩道みたいなものがあり、ベンチで座って景色を観ることができるようになっていた。きょろきょろとうずしおを探しつつ、左足のSPDだけ外した状態で石畳の遊歩道をふらふらと進んでいると、急にドタッという音がして、私は横になっていた。タイヤが石畳の間に挟まって、バランスを崩し、どうやらコケちゃったようである。急いで立って周りを見てみると男女あわせて5〜6人のグループがこちらを見ている(ような気がした)。私はニヤニヤしながら急いでその場を立ち去った。なんでああいう時、顔がニヤつくんだろう。

道の駅うずしお
この人たちが見てる前でコケました。

気をとりなおしてうずしおを探すが、どれがそうなのかよく分からない。多分これだろうと思われるものを写真に収めた。

うずしお
水平線近くがちょっと渦巻いているような…。

自転車と共にボーっと海を見ていると、知らないおじさんが「ここまでの坂登ってきたんか、えらい馬力やなあ」と話しかけてきた。「いやー、そんなことないですよ」と言いつつ、内心「そうでしょ、すごいでしょ」と鼻タカダカである。このおじさんは私がコケた所を見てないようなので、偉そうにしておいた。

30分ほどで道の駅うずしおを後にし、坂をサーッと下りきるとまたもやアップダウン地獄があり、その後海岸沿いに出て、西淡町に入った。ここからは割と平坦で走りやすかった。

まだ道の駅うずしおを出て30分ほどしか経っていないが、緑の道しるべ阿那賀で休憩。走っているとよく、きれいな景色の所で「緑の道しるべ」というのがある。それにしても今日は休憩しすぎかもしれない。

緑の道しるべ阿那賀
自転車と一緒に。

まだ明るいのだが、だんだん日差しが夕方の色に変わってきた。残すメニューは「淡路サンセットラインをサンセット時に走ること」のみである。順調、順調。

海岸沿いを行ったり、内陸に入ったりしながら進むこと1時間、18:00頃慶野松原に到着。
松林の中を進んで浜辺に出ると、夕日がまぶしく光っていた。絶景!

慶野松原 慶野松原の夕日
この松林を過ぎると…    どうだどうだ!

さてここから五色の民宿まではあと一息である。淡路サンセットラインを夕日を浴びながら快調に進む。シチュエーションのおかげで、なんだかイイ女になったような気分である。

民宿へは都志から内陸に入る。この都志から民宿までの道のりが、本日の締めくくりにふさわしい極め付けの登り坂だった。しかも思っていたより長い。本当は民宿で温泉に入ってから都志に戻ってご飯を食べようと思い、お店の目星をつけていたのだが、寝る前にこれを登るのは非常にイヤなので民宿で夕飯をいただくことにした。

19:00民宿着。民宿といっても大きくてきれいな所で、自分のキタナイ姿を棚に上げて豪華な気分になった。フロントで自転車を預かってもらえたので嬉しかった。

食事が20:30ラストオーダーということで、急いで先に温泉へ行く。お風呂で、海風でギチギチになった髪と砂埃まみれになった体を洗って、スッキリサッパリすると疲れが取れるような気がした。「エステ風呂」に貪欲に長時間つかっておいた。

温泉から上がり、民宿の中にあるレストランへ。豪華に「淡路牛瓦焼定食」と、もちろんビールをオーダーする。焼肉定食は、小さなコンロに乗せた瓦の上でお肉やたまねぎやピーマンを焼いて食べた。
西淡町を走っている時、瓦に絵が描いてある制作物を飾った小学校や、瓦のミュージアムのような建物があった。瓦は淡路の特産物のようである。
淡路牛はとってもやわらかくて、ほんとーーーうにおいしかった。味覚の表現力が皆無でうまく伝えられないのが残念である。ビールも進む、ご飯も進む。ああ今日も幸せ。

豪華「淡路牛瓦焼定食」
豪華「淡路牛瓦焼定食」

就寝前、またまた田辺誠一が出ているドラマを見る。平日に毎日やっているのだ。
今日もかっこええがなーと、自販機で買ったビールを片手に見ていると、自分の顔面の筋肉がだらしなく緩んでいるのが分かる。サンセットラインでの走行でイイ女になったような気がしていたが、本質は変わっていないようだ。テレビが終わって23:30、就寝。

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