回転木馬の独り言

2003年7月

 初のオーダー車から半年か1年後。今度はロードを作った。ロードの事は良くわからなかったので、ケルビムの今野さんにお任せした。確か、シートピラーのマックスラインギリギリまで出すようでもいいから、ちょっとでもフレームサイズを小さくして欲しいとお願いした。でも、結局ランドナーと変わらず、620mmだった。仕方ない。デカ過ぎるのがいけないんだ。

 ロードは快適だった。初めてロードに乗ったときの驚きは今も忘れない。アイススケートのような感じ。そう、なんせ、スィーと走る。ちょっと頑張れば40km/hくらいすぐに出せる。一度、友達の原チャリと競争していて、ねずみ取りに引っかかった。原チャリだけが止められたものと思いこんで、友達を見捨て、その場を去ろうとしたらボクまで引き留められ怒られた。その時初めて自転車にも制限速度があることを知った。自転車は軽車両なので時速30kmが制限速度。もしかしたら自動車教習所で習ったのかも知れなかったけれど、頭にしっかりと入ったのはその時。

 そして、残念ながら、このロードも一年と保たなかった。レイクウッドゴルフ場の方へ練習に行ったその帰りの下り坂。前走車のO氏が落車!道路の一部が陥没していて、そこに突っ込んだのだ!穴は狭い道路の左半分くらい。で、O氏は突っ込んだ拍子に右側に倒れた。ボクは一瞬のうちに色々考えた。穴に突っ込んだら、ボクも確実にぶっ飛ぶ。それよりはO氏に突っ込んだ方がいいかも・・・・。と言うのは(多分)ウソで、ボクは思いっきり腰を引いてその穴に突っ込んだ。幸い落車は避けられたが、フレームが・・・・。やれやれ。O氏は確か救急車で運ばれたように記憶しているけれど、フレームが逝ってしまったショックであまり詳しく覚えていない。怪我は保険がきくけれど、フレームだけって保険はきかないのだ。当然ながら・・・・。

 で、このロードフレームもランドナーと同じく、前三角のみ差し替えとなった。カラーは前と全く同じパターン(赤と黒で塗り分けていた)でお願いしてあったのだが、勿論、仕上がってきたモノは同じパターンでは無かった。言うまでも無いことだが・・・。このロードは今でも元気に走っている。

 フランスでランドナーを盗まれて、その後、ボクはランドナーを作ることは無かった。保険には入っていたので、その保険金でMTBを作ることにした。

 当時、山を走ることに凝っていたのだ。ランドナーで随分と走っていた。なら、今度はツーリングにも使えるMTBを作ろうと思ったのだ。その当時はまだ、それほど多くのMTBは発売されていなかった。だから参考にするモノもほとんど無く、ディメンション決定はまさに暗中模索。ランドナーをオーダーした時のように(或いはそれ以上に)ケルビムに通った。少しでも登りが楽なようにと考えに考え、その後エレベーテッドチェンステイと呼ばれることになるデザインも思いついた。が、ケルビムの今野さん曰く「ダメだね、こりゃ」。一蹴されてしまった。しかし、その何年後かにエレベーテッドチェンステイはちょっとしたブームになったのだ。やられた。特許とっておきゃ良かった。そうしたら今頃、悠々自適の生活をしていたかも知れない。

 サイズは、今から見ればとんでもなくでかく(580mm)、その割にはトップは短かった。でも、何とかフロントを所謂前三角にしたかった。今まで作ったのはどれも前四角。なので、BBセンターからトップチューブセンターまでは550mmにして、最近では当たり前になったハイシートスタイル(トップチューブより上にシートチューブがグッと出ているデザイン)にしたり、当時のMTBにしてはかなりヘッドアングルも立てたりした。

 ランドナーで山を走り回っていた経験を活かし、パーツアッセンブルにもかなりこだわった。当時、画期的なブレーキと言われたサンツアーのXCパワーブレーキの採用。その性能を最大限活かし切るため、ブレーキはチェンステイ下に取り付けた。しかし、これは失敗。このブレーキ全然効かなかったし、チェンステイ下のブレーキは泥が詰まりやすかった。結局すぐにシマノのUブレーキに交換して制動力だけはアップしたが、泥詰まりはいかんともしがたかった。リアメカは最近のDHシーンで見られるようにロード用のアルテグラを使用。これは少しでもキビキビ変速して欲しかったのと、チェンのバタツキを抑えるため。フロントのチェンリングはトリプル仕様のアウターをガード代わりに使い、実際にはセンターとインナーのダブルで使った。

 そしてなんと言っても最大のミソはランドナーとして使えることだった。ハンドルをドロップバーに交換し、タイヤもスリックタイプに。ダウンチューブにWレバーを付け、泥除けやキャリアも装備して立派なランドナーになった。そんなわけで、MTBとしてだけではなく、ランドナーとしても活躍してくれた。そして特筆すべきは、このMTBフレーム、、ボクのオーダーフレーム達の中で唯一、一年以上の長きに渡りクラッシュをしなかったのだ!素晴らしい!

 が、しかし、一年とちょっとたった5月のある日。確か合宿の集合地まで行くため、未明に下宿を出て走っていた。眠たかったのだ。途中、居眠り運転をしてしまい、縁石に突っ込んでしまった。若干下り気味だったので快適に、しかもそこそこのスピードが出ていたのだろう。フロントフォークもフレームも見事に曲がってしまった。流石にケルビムの今野さんにも呆れられた。そりゃそうだ、作ってもらったフレーム全てを潰したわけだから。そんなわけで、このMTB君もフレームの前三角交換という大手術を受け、今も元気(?)にしている。

 因みにこの時、ボクは「カラーはフェラーリのような赤に」と頼んだ。今野さんは「あぁ、綺麗な赤ね」と言ってオーダーシートに「キレイな赤」と書き込んでいたのを覚えている。多分、彼の中では「フェラーリレッド=キレイな赤」というきちんとした式が出来ているのだろうと思ったのだが、一抹の不安もあった。果たして、フレームは見事に「綺麗な赤」色に仕上がっていた。それはボクには綺麗なキャンディーレッドに見えたけど・・・・。

ではまた。

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